ギブラーリについて

開発の経緯

 

ギブラーリ(一般名:ギボシランナトリウム)は、Alnylam Pharmaceuticals社が創製した急性肝性ポルフィリン症(acute hepatic porphyria:AHP)治療薬であり、肝臓の5’-アミノレブリン酸合成酵素1(5’-aminolevulinate synthase1:ALAS1)遺伝子のmRNAを標的として化学的に合成された二本鎖の低分子干渉RNA(small interfering RNA:siRNA)です。ギブラーリは、選択的に肝臓に送達されるようにアシアロ糖タンパク質レセプター(asialoglycoprotein receptor:ASGPR)のリガンドであるN-アセチルガラクトサミン(N-acetylgalactosamine:GalNAc)にsiRNAが結合した構造を有しています。

急性肝性ポルフィリン症とは

AHPは4つの病型[急性間欠性ポルフィリン症(acute intermittent porphyria:AIP)、遺伝性コプロポルフィリン症 (hereditary coproporphyria:HCP)、異型ポルフィリン症(variegate porphyria:VP)、アミノレブリン酸脱水酵素欠損ポルフィリン症(aminolevulinic acid dehydratase deficiency porphyria:ADP)]に分類され、病型ごとにヘム生合成経路に関わる特定の酵素が欠損しています。AHPではある種の薬剤、月経周期、感染、炎症、空腹時グルコース値などの環境要因又はストレス要因がALAS1 mRNA転写を誘導し、下流のヘム合成系酵素の欠損によって神経毒性を有するヘム生合成中間体であるアミノレブリン酸(aminolevulinic acid:ALA)やポルフォビリノーゲン(porphobilinogen:PBG)が過剰に産生されます。すべての病型で基本的な病態生理は共通しており、急性ポルフィリン症発作などの臨床症状は類似しています。ただし、HCP患者及びVP患者では、光感受性のポルフィリン体が過剰に産生されることによって発作とは別に皮膚症状が発現します。

ギブラーリとは

ギブラーリは、RNA干渉(RNA interference:RNAi)により肝臓のALAS1 mRNAの特異的な分解を促進することで、ALA及びPBGの循環血中濃度を低下させるsiRNA製剤です。ギブラーリの有効性及び安全性は主としてAHP患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験(ENVISION試験)の二重盲検期間から得られた結果によって示され、続くオープンラベル継続投与(open-label extension:OLE)期間、海外第Ⅰ相臨床試験の結果ならびに海外第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の長期データによって裏付けられています。

国内外におけるギブラーリの承認状況

米国では、米国食品医薬品局(FDA)より希少疾病用医薬品及び画期的治療薬の指定を受け、2019年11月に成人のAHP治療薬として承認されました。また欧州においても、欧州医薬品庁(EMA)より希少疾病用医薬品及びPriority Medicines(PRIME)schemeの指定を受け、2020年3月に成人(18歳以上)及び青年期(12歳以上18歳未満)のAHP治療薬として承認されています。さらに、成人のAHP治療薬として2020年7月にブラジルで、2020年10月にカナダで承認され、成人及び青年期におけるAHP治療薬として2021年3月にスイスで、2021年6月にイスラエル、等で承認されています。本邦では、2020年6月に希少疾病用医薬品に指定され、2020年9月に承認申請を行い、2021年6月に「急性肝性ポルフィリン症」を適応症として製造販売承認を取得しました。